「医療人文学」とは、人文学系アプローチと、医学・薬学・生物学・生命科学系からのアプローチのクロスオーバー新領域研究の実現をめざす、文理融合の研究領域です。日本学術振興会・基盤研究(C)「アジアの薬草メディスンマンにおける医療表象文化と神話・歌謡文学の発生理論の研究」(研究課題/領域番号 16K02615)において提唱した研究分野です。

欧米を中心としたMedical Humanitiesは、医学および医学教育への実践・応用を目指した、人文科学、社会科学、芸術などの学際的な研究分野を指します。日本では医学教育分野からのアプローチが主で、欧米では多様な分野からのアプローチが行われています。

本研究における「医療人文学」の枠組みで明らかにするのは、文学と医療の密接な関係についての理論的枠組みの提出です。このような人文学分野からの医療分野への関心は、新型コロナウイルス感染症を経験した現在、特に社会的な要請が高まっており、文学研究への貢献としても非常に意義が大きいものです。

現代医療の世界では、現在、対症療法の限界を抱え、予防医療・代替医療の再評価が行われています。本研究は、現代医療および社会的要請の中にある新しい枠組みをも再構築するものとして意義のあるものといえます。